2020.03.04 在日韓国人・朝鮮人という存在
私、黄 智英は国籍の観点からいうと、祖父母が朝鮮半島にルーツを持つ、在日韓国人三世だったのですが、現在は帰化をして、韓国系日本人という存在になりました。
そして、私自身の経験からしても在日韓国人・朝鮮人という存在は不思議な存在ではないかと思っています。というのも私がまだ韓国籍の時にアメリカに住んでいたときの話ですが、アメリカは国籍に関し、出生地主義の国なのでアメリカで生まれればアメリカ国籍を取得しているのが通常です。またアメリカは移民国家なので、世界の多くの国から人が来ており、そこで生まれた二世以後の世代は例えば、コリアン・アメリカン(韓国系アメリカ人)とかチャイニーズ・アメリカン(中国系アメリカ人)と言われたりもしますが、国籍はアメリカ国籍を取得しているのが普通です。私はアメリカに滞在していた当時、アメリカ人や他の国から来ている人に私自身の国籍に関して説明するのに苦労をした記憶があります。どうも彼らにすれば日本で三世として生まれたが私が日本国籍を取得していないことが不思議だったようです。このようなことはどうして起こるかというとアメリカとは違い日本は国籍に関し、血統主義の国ですので、日本の国籍法によれば一部の例外を除いて、出生時に父母のどちらかが日本国籍者ではないと子は出生時に日本国籍者とはなりません。また現在、日本は父または母のどちらかが日本国籍者であれば出生時に日本国籍を取得できる両系主義となっていますが、過去には父が日本国籍者でないと出生時に日本国籍が与えられない父系主義をとっていて、それが1985年の国籍法改正により、父または母どちらか一方でも日本国籍者の場合は出生時に子の日本国籍が取得できるようになりました。
私の在日の知人の中にも父が韓国人で母が日本人という人がいましたが、その方は1985年以前の生まれでしたので、その当時の父系主義の日本の国籍法により、韓国籍でした。また同じような組み合わせの父母で生まれた場合でも1985年以降に生まれた場合は上記、国籍法の改定により出生時に日本国籍が取得できるという事実があり、父母の状況は同じなのに法律の改定により、国籍の状況が変わるというのは、
なんとも不思議な感じがして個人的にはどこか釈然としないところがありました。
いずれにしても日本の国籍法が現在の血統主義を維持する限り、在日韓国人・朝鮮人は父または母が日本人と婚姻し、その間に生まれてこない限りにおいては、出生時に日本国籍を取得することはなく、帰化をしていない在日間の婚姻により生まれてくる子供は、この国籍法の状況が維持される限り、何代重ねても出生時に日本国籍を取得することはないという状況にあります。現在、在日韓国人・朝鮮人はすでに4世もしくは5世が出生するという状況において、また、そろそろ100年近く日本で世代を重ねてきている家族も少なくない現状において、いまだ日本国籍を取得していないというのは個人的には不思議なことではないかと思います。
もちろん、前提として日本の国籍法の規定が厳然としてあるという事実があり、そして、また現在においては帰化の審査が必ずしもそれほどハードルが高くないという現状がありながら自ら韓国籍・朝鮮籍を選択して生きることは否定されるべきではなく本人の選択が尊重されるべきだと思います。
また、一方で現実論として、日本国籍でないことにより、公務員となることや参政権などにおいて制限が存在する中で、日本国籍でないことの不利益がある現実を踏まえて民族と国籍は別との考えで帰化をして韓国系・朝鮮系日本人として生きる選択肢もあるのではないかと考えています。